デジタル時代の選挙戦略において、SNSの活用は不可欠となっています。
しかし、兵庫県知事選で再選を果たした斎藤元彦知事の陣営をめぐり、PR会社との契約内容が公職選挙法違反の疑いを指摘される事態となりました。
71.5万円の支払いの真相と、新たに判明した事実から、選挙運動の在り方を考察します。
浮上した3つの疑惑
事の発端は、11月20日にPR会社「merchu」の代表・折田楓氏が情報発信プラットフォーム「note」に投稿した記事でした。
広報全般を任せていただいた
と明言し、SNS運用の詳細な戦略を公開したことで、公職選挙法違反の疑いが指摘されることとなりました。
主な争点は以下の3点です:
- 71.5万円の支払い内容の妥当性
- SNS運用の「無償ボランティア」説の信憑性
- 有識者会議委員としての立場との関係
明らかになった支払いの内訳
斎藤知事陣営は、PR会社への支払い71.5万円の内訳を以下のように説明しています:
- メインビジュアル企画・制作:10万円
- チラシのデザイン:15万円
- ポスター・デザイン制作:5万円
- 公約スライド制作:30万円
- 選挙公報デザイン制作:5万円
(消費税6.5万円を含む)
新たに判明した有識者会議との関係
JNNの取材により、PR会社代表が3年前から県の有識者会議に出席し、計15万円の謝礼を受け取っていたことが明らかになりました。
公職選挙法では、自治体と利益を伴う契約関係にある者による選挙に関する寄付を禁止しています。
注目されるSNS戦略の実態
折田氏が公開した戦略資料によると、選挙運動は3つのフェーズで計画されていました:
フェーズ1「種まき」(10/1-10/13)
- 既存支持者へのアプローチ
- 好感度向上施策の展開
フェーズ2「育成」(10/14-10/31)
- 無関心層への働きかけ
- 政策理解の促進
フェーズ3「収穫」(11/1-11/17)
- 全有権者への訴求
- 誤解解消と支持拡大
各政党の反応と専門家の見解
立憲民主党の小川幹事長は
ネットが選挙運動の主役に躍り出つつあり、想定されていない事態が起きている
と指摘。
日本維新の会の藤田幹事長は
言論空間の規制には抑制的であるべき
と述べています。
公職選挙法に詳しい元検事の亀井正貴弁護士は
SNSの管理や運営を行い、そこに対してお金を支払うと買収罪が成立する可能性がある
と指摘しています。
デジタル選挙運動の課題
この問題は、デジタル時代における選挙運動の在り方に新たな課題を投げかけています。
総務省のガイドラインでは、業者による主体的な企画立案への報酬支払いは買収となるおそれが高いとされています。
一方で、機械的な監視業務や誹謗中傷への対応については、直ちに買収とはならないとの見解も示されています。
今後の展開と注目点
県の選挙管理委員会には、PR会社の投稿内容が事実であれば違法ではないかという指摘が複数寄せられています。
斎藤知事は
公職選挙法など法令に抵触することはないと認識している
と述べていますが、今後は以下の点が焦点となります:
- PR会社への請求書の内容
- SNS運用の実態解明
- 有識者会議との関係性の精査
デジタル技術の進化により、選挙運動の形は大きく変化しています。
この事案を通じて、新しい時代における選挙運動の適切なルール作りが求められているといえるでしょう。
(2024年11月26日現在の情報に基づき作成)