日産自動車が大きな転換点を迎えています。
、同社は世界で9000人の人員削減と生産能力の20%削減を発表しました。
この決断の背景には、米国でのハイブリッド車不足による販売不振や、中国での電気自動車市場における競争激化があります。
日産は今、どんな状況に直面しているのでしょうか?
「日産の工場で、生産ラインの4割が止まっている──」
これは、中国における日産の現状を示す衝撃的な数字です。
かつては年間500万台の生産能力を誇った日産が、なぜここまで苦しい状況に追い込まれたのでしょうか。
なぜ今、日産は大規模な人員削減に踏み切ったのか
日産が直面している最大の課題は、米国と中国という2つの主要市場での苦戦です。
まず米国市場では、ハイブリッド車(HV)の品揃えが十分でないことが大きな痛手となっています。
トヨタやホンダがハイブリッド車で好調な販売を続ける中、日産はこの分野での出遅れが目立っています。
この状況を少しでも改善しようと、日産は販売店への支援金(業界用語では「販売奨励金」)を増やしています。
しかし、これは会社の収益を圧迫する要因にもなっているのです。
中国市場ではさらに厳しい状況が続いています。
現地メーカーとの電気自動車(EV)での価格競争が激化し、工場の稼働率は2019年と比べて38ポイントも低下。
実に57%もの生産能力が使われていない状態なのです。
このように、日産の主力市場での苦戦が、今回の大規模な改革の背景となっています。
では次に、具体的にどのような対策が取られるのか、詳しく見ていきましょう。
みなさんは、自動車メーカーの工場稼働率がこれほど下がることがあると想像していましたか?
9000人削減の影響とは?従業員13万人の会社で何が起きるのか
今回発表された9000人の人員削減。
これは全従業員13万人の約7%にあたります。
つまり、100人いたら7人が対象となる規模です。
この規模は、に実施された前回の大規模リストラ(1万2500人削減)に次ぐ規模となります。
当時は、工場14カ所の閉鎖も併せて実施されました。
今回の削減について、内田誠社長は場所と時期については現時点で申し上げられない
としています。
ただし、世界各地の拠点が対象となる可能性が指摘されています。
さらに注目すべきは、生産能力の見直しです。
現在の年間500万台弱から約400万台へと、2割の削減が計画されています。
これは5台作れた工場が4台体制になる
というイメージです。
このような大規模な改革を受け、内田社長は今月から当面の間、基本報酬の半額を返上すると発表。
他の経営幹部も同様の対応を取ることになっています。
ここまで人員削減と生産体制の見直しについて見てきましたが、では日産はこの先どのような戦略で業績の回復を目指すのでしょうか?
日産の世界戦略はどう変わるのか
日産が目指すのは、「無理のない規模での持続的な成長」です。
具体的には、年間350万台の販売でも十分な収益を上げられる体制づくりを目指しています。
これは、以前掲げていた「販売台数を100万台増やす」という目標からの大きな方針転換です。
量より質を重視する戦略への転換と言えるでしょう。
また、提携先である三菱自動車との関係にも変化が起きています。
日産は保有する三菱自動車の株式(34%)のうち10%を売却することを決定。
これにより約700億円の資金調達が可能になるとされています。
では、このような状況から日産はどのように回復を目指すのでしょうか?
業績回復への道筋
日産の回復戦略は、大きく3つのポイントに集約されます:
- 固定費の削減
- 人員削減と生産能力の見直しで、約3000億円の固定費削減を目指します
- 設備投資の優先順位を見直し、効率的な投資を進めます
- パートナーシップの強化
- ルノー、ホンダ、三菱自動車との協力関係を深めます
- 開発コストの削減と、商品力の向上を目指します
- 経営体制の刷新
- に役員体制を見直します
- より機動的な意思決定が可能な体制を目指します