「普通」って何だろう?
その問いに、まったく異なるアプローチで答えを示す2つの作品が、『このマンガがすごい!2025』で1位に選ばれました。
デビューからわずか1年の新人と、数々の名作を生み出してきたベテラン—。
対照的な2人の作家による作品が、いま多くの読者の心を揺さぶっています。
デビュー1年で快進撃!『君と宇宙を歩くために』とは?
オトコ編1位に選ばれた『君と宇宙を歩くために』は、にデビューしたばかりの新人作家・泥ノ田犬彦による作品です。
勉強もバイトも続かないドロップアウトぎみなヤンキーの小林と、クラスの変わり者・宇野。
「普通のことが苦手」という共通点を持つ2人が出会い、それぞれの生きづらさを抱えながらも、前を向いて歩もうとする姿を描いています。
普通が苦手な2人が見つける新しい生き方
「普通って何?」という問いかけは、誰もが一度は考えたことがあるはず。
この作品は、その答えを2人の高校生を通じて探っていきます。
連載開始からわずか5日で閲覧回数110万回を突破。
SNSでも大きな話題を呼び、多くの読者の共感を集めています。
そして、マンガ大賞2024を受賞。
デビューからわずか1年での快挙に、業界からも熱い注目が集まっています。
泥ノ田犬彦はどんな作家?驚きの経歴とデビューまでの道のり
静岡県出身の泥ノ田氏。
中学時代、美術の先生が持ってきた『海獣の子供』との出会いが、漫画家を志すきっかけとなったといいます。
大学時代に初めて漫画を描き始め、にアフタヌーン四季賞で準入選。
に『東京人魚』でデビューを果たしました。
このように、新人作家ながら確かな描写力と独自の世界観で多くの読者を魅了する泥ノ田氏。
その作品が描く「普通とは違う生き方」は、次にご紹介する『環と周』が描く「好きの形」とも、不思議な響き合いを見せています。
よしながふみが描く新たな物語『環と周』の魅力
オンナ編1位の『環と周』は、『大奥』や『きのう何食べた?』など、数々の名作で知られるよしながふみの最新作です。
「好き」の多様な形を描く連作短編集
物語は、ある日娘の朱里が同級生の女の子とキスをしているところを目撃した母・環が、夫に相談するところから始まります。
実は夫にも、中学生の頃に同級生の男の子を好きになった経験が...
「環」と「周」という2人の魂が、さまざまな時代で出会い、めぐりあう様子を描いた連作短編集となっています。
豊富な受賞歴が証明する実力
よしながふみといえば、講談社漫画賞や手塚治虫文化賞大賞など、数々の賞を受賞してきた実力派作家。
には『大奥』で日本SF大賞を受賞するなど、ジャンルを超えた評価を得ています。
なぜこの2作品が選ばれたのか?共通点と相違点
一見まったく異なる2作品ですが、そこには共通する思いが込められています。
それは「自分らしさとは何か」という問いかけ。
『君と宇宙を歩くために』では「普通」という枠組みへの問いとして、『環と周』では「好き」という感情の多様な形として描かれています。
両作品の見どころと読み方
デビュー作と最新作。
新人とベテラン。
アプローチは違えど、どちらも「生きづらさ」や「違和感」を抱える人々の物語を、繊細かつ力強く描いています。
特に印象的なのは、どちらの作品も決して「答え」を押し付けないこと。
読者一人ひとりが、自分なりの答えを見つけられる余白を残しているのです。