「もう、ヒグマの駆除はできません」
北海道猟友会が下した異例の決断が、道内全域に波紋を広げています。
、ある裁判をきっかけに、71の支部すべてにヒグマ駆除要請の拒否を通知する方針を固めた猟友会。
なぜ、このような決断に至ったのか。そして私たちの安全は、誰がどのように守っていくのか。今回は、その背景にある驚きの実態に迫ります。
なぜ今、北海道猟友会はヒグマ駆除を拒否したのか
驚きの実態:日当4800円で命がけの仕事
「高校生のコンビニバイトみたいな金額でやれって言うんです。ハンターを馬鹿にしてないですか?」
北海道猟友会砂川支部奈井江部会の山岸辰人部会長(72)は、そう語ります。
実は、ヒグマ駆除の基本日当はわずか4800円。危険な仕事の加給を含めても8500円程度なんです。
「ヒグマは相手が違います。鉄砲を持っているからって、特殊部隊が相手にするようなものですよ」
そう話す山岸さんの言葉には、重みがあります。
驚くことに、奈井江町では昨年だけで20件ものヒグマ目撃情報がありました。そして、その対応に充てられる年間予算はたったの110万円。実際の活動費として使えるのは、わずか15万円程度だといいます。
このように、ヒグマ駆除の現場では、危険な仕事の割に極めて低い待遇という問題を抱えていました。では、なぜ今まで続けてこられたのでしょうか?
決定的な転機となった猟銃許可取り消し訴訟
事態が大きく動いたのは、のある裁判でした。
、砂川市でのヒグマ駆除活動中に発砲したハンターが、その後、銃の所持許可を取り消されるという事態が起きました。
発砲時の安全確認が不十分だったという理由です。このハンターは処分の取り消しを求めて裁判で争いましたが、、高裁で敗訴が確定したのです。
「驚きを通り越して呆れました」
北海道猟友会の堀江篤会長は、その時の心境をそう表現しています。
このように、命がけの仕事に加えて、法的なリスクまで背負わされる状況に、ハンターたちの不安は頂点に達しました。
深刻化する人材不足と高齢化問題
さらに深刻なのが、ハンターの人材不足です。
例えば、奈井江部会の会員はわずか5人。そのうち3人が70歳以上という状況です。
「平日は皆それぞれ仕事があります。緊急出動の要請があっても、人が集まらない時もあるんです」
このように、現場では高齢化と人手不足という二重の問題を抱えています。
自治体による報酬格差の現実
興味深いのは、自治体によって報酬に大きな差があることです。
- 札幌市
- 2万5300円~3万6300円
- 島牧村
- 2万6900円~4万300円(捕獲時は追加で10万円)
- 奈井江町
- 8500円(最大1万300円)
なぜ、このような差が生まれるのでしょうか?
「予算がない」という自治体の説明に対し、山岸さんは「民間企業だったら即却下されるような杜撰なプラン」と指摘します。
住民の安全は誰が守るのか - 今後の展望
では、これからヒグマが出没したらどうなるのでしょうか?
専門家からは「自治体主体の新しい対策システムの構築が必要」との指摘があります。
しかし、それには時間がかかります。当面は、住民一人一人が以下のような対策を心がける必要があるでしょう。
- ゴミの適切な管理
- 夜間の一人歩きを避ける
- 鈴やクマ撃退スプレーの携帯