「#さいとう元知事がんばれ」から「#さいとう元彦知事がんばれ」へ。
一見何気ないこのハッシュタグの変更が、なぜ大きな議論を呼んでいるのでしょうか?
何が話題になっているのか
事の発端は、兵庫県知事選挙の広報担当者が公開したnote記事でした。
この記事で明かされた内容は、SNSを使った選挙運動の在り方に大きな波紋を投げかけることになります。
「(斎藤元彦)ご本人は私の提案を真剣に聞いてくださり、広報全般を任せていただくことになりました。」
— 国敗山河🇯🇵 萩生田79,216-有田71,683=7,533 (@yabusanga) November 21, 2024
と付記された「SNS運用フェーズ」の図表が無くなっていますが、何かご事情がおありですか? pic.twitter.com/R98coWJ3an
広報チームは「さいとうさん=知事」というイメージを定着させるため、意図的にハッシュタグを設計したといいます。
単なる「元彦」という名前ではなく、あえて「元知事」という言葉を選んで使用。
そして、選挙期間中に「元彦知事」へと変更することで、より強い印象付けを図ったのです。
この戦略は広報会社による緻密な計画のもとで実行されました。
投稿のタイミングは調整され、内容は一元管理。
その結果、わずか1.5ヶ月ほどでフォロワー数は驚異的な伸びを見せます。
たとえば、X(旧Twitter)の本人アカウントは7.8万から24.3万へ。
公式応援アカウントは開設からわずかな期間で6.4万のフォロワーを獲得しました。
なぜ大きな話題となったのか
この件が特に注目を集めている理由は、選挙運動の新しい形に対する懸念があるからです。
これまでのSNSを使った選挙運動は、主に個人や支持者による自発的な活動でした。
しかし今回は、プロフェッショナルな広報会社が報酬を受けて組織的に展開。
しかも、普通なら表に出ることのない戦略の詳細まで公開されたのです。
さらに注目すべきは、この活動が単なるPR活動の域を超えている可能性です。
投票行動に影響を与えようとする意図が明確に示され、その効果まで数値化されていました。
実際に問題があるのか
ここで重要になってくるのが、公職選挙法の解釈です。
同法では、選挙運動に対する報酬の支払いや、組織的な選挙運動の管理が禁止されています。
問題は、今回の活動がこれらに該当するかどうかです。
広報会社への報酬支払いは、通常のPR活動の範囲内なのか、それとも選挙運動への対価なのか。
投稿の管理や統制は、一般的な広報活動の域を超えていないのか。
ハッシュタグによる印象操作は、投票依頼行為に当たるのか。
これらの判断は決して簡単ではありません。
選挙法の専門家たちも、この問題の難しさを指摘しています。
デジタル時代の選挙運動において、PRと選挙運動の境界線はますます曖昧になっています。
影響力の測定や意図の立証も容易ではありません。
さらに複雑なのは、この問題が表現の自由とも深く関わっているという点です。
過度な規制は、政治的な議論や表現活動を萎縮させかねません。